特許の明細書と特許請求の範囲、実施例との関係を説明します

こんにちは。兵庫県 西宮市の弁理士・倉橋です。

 

今回は特許出願の「明細書と特許請求の範囲、実施例との関係」について大まかに説明していきたいと思います。

 

明細書と特許請求の範囲と実施例との関係

前回のおさらいになりますが、特許出願では特許庁長官に、願書を提出する必要があるとお伝えしました。また、その願書には「明細書」「特許請求の範囲」「図面」「要約書」を添付する必要がありましたよね。

今回は、この「明細書」「特許請求の範囲」「(明細書に記載された)実施例」の関係をご紹介したいと思います。

 

 

(1) まず、以下の画像は「明細書」「特許請求の範囲」「実施例」の関係を示す図になります。

上の画像の外側の円は、願書に添付した「明細書(発明の詳細な説明)に記載された範囲①」を表しています(便宜上、その範囲を円形とイメージして描いています)。

この「明細書の範囲①」は、明細書中に記載した実施例a,b,cによってサポートされています。逆に言うと、実施例a,b,cのいずれかが足りなければ、「明細書の範囲①」はこれよりも小さなものになってしまいます。

 

そして、最も重要な「特許請求の範囲①(権利範囲)」とは、明細書の範囲①の中から権利化したい部分を抽出したものだと考えると分かりやすいと思います。

 

 

(2) 次に、下の画像は、実施例a,b,cに加えて、さらに実施例d,e,fを追加していた場合について示したイメージ図です。

実施例d,e,fを加えることにより、明細書の範囲はさらに大きくなり(明細書の範囲①’)、特許請求の範囲(権利範囲)もさらに大きくすることができます(特許請求の範囲①’)。

さらに、明細書の範囲が大きくなったことにより、特許請求の範囲②を加えることも可能になります。

 

 

特許出願は拒絶されやすい?

特許出願は拒絶されやすいと相談されることがありますが、この理由は特許法の制度によるものだと私は考えます。

 

例えば、私たち弁理士が特許出願の書類作成を依頼された場合、特許の権利範囲(特許請求の範囲)をできるだけ大きくしようとします。明細書の記載(実施例など)を充実させ、上手く記載することでクライアントの特許発明の権利範囲(特許請求の範囲)を拡充させようとする訳です。

 

 

しかしながら、権利範囲が大きくなると、他人の特許権や先願特許発明(先に出願された特許発明)と抵触する可能性は高まります。

他人の先願発明(権利範囲)や特許権と抵触している場合には、出願しても拒絶理由が通知されてきます(そのままにしていれば、特許出願が拒絶されてしまいます)。

しかし、他人の特許権などに抵触しているという拒絶理由の通知が来ても慌てる必要はありません。補正をして抵触している部分を削れば特許を受けることができるからです。

 

弁理士は、お客様のために、権利範囲を大きくして特許出願するのが普通です。
逆に、拒絶理由が通知されずに特許を受けた場合には、「小さく請求し過ぎたかな(もっと権利範囲を広くできたかも…)」と考える人が多いと思われます。

もちろん様々な事情があるため、拒絶理由の通知なく一発で特許を受けたいという場合もあると考えます。

その場合には その旨を担当する弁理士に伝えることで、権利範囲(特許請求の範囲)を狭くしてくれます。そうすることで、他人の特許権などと抵触しているという拒絶理由が通知されてくる可能性を低くくできます(絶対ではありません)。

 

 

なぜ権利範囲(特許請求の範囲)は広い方が良いの?

特許出願では権利取得までの期間が長いため、その間に流行が変化したり、多少の方針変更・設計変更が行われたりする事も多いです。つまり、特許出願に記載した発明をそのまま実施する人は少ないと言えます。

 

もし、(変化を予測した上で)大きな権利範囲の特許を取得できれば、多少の設計変更があっても権利を保護でき、安心して事業を展開することができます。むしろ権利範囲が小さいと時流の変化に対応しにくいと言えます。そのため、私たち弁理士はできるだけ大きな権利範囲の特許取得を目指すわけです。

 

また、権利範囲が大きければ、当然ながら他人が特許発明を侵害しやすくなるため、権利行使(差止請求や損害賠償請求など)することで、結果的に先行者利益を得られやすくなります。さらに、権利範囲が大きく有用な特許を取得していると、ライセンス契約やビジネスパートナーを得る機会も増えます。

このように、特段の事情がなければ「権利範囲(特許請求の範囲)はできるだけ広い方が良く」、「普通は権利範囲が広くなるように特許請求の範囲を記載する」ものだということは覚えておいてください。

 

 

いかがでしたか?

特許出願の「明細書」や「特許請求の範囲」の記載、実施例の選び方などは、ある意味ノウハウですし、初心者にはハードルが高いものだと考えます。もしも特許出願をご検討されている人は、専門家に任せた方が安心だと思われます。お気軽にご相談ください。

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