【お知らせ】特許出願の非公開制度が導入開始へ(2024年5月1日から施行)

こんにちは、兵庫県 西宮市の弁理士・倉橋です。

 

今回は、5月1日より運用が開始予定の  特許出願の非公開制度  について、
制度概要を簡単に紹介・解説したいと思います。

参考記事:「特許庁 特許出願非公開制度について

 

「特許出願の非公開制度」ってどんなもの?

「特許出願の非公開制度」とは、言葉どおり、特許出願の明細書等を非公開にする制度のことを言います。

 

全ての特許出願ではなく、「保全指定」がされた場合に出願公開などの特許手続が留保されることになります。

なお、この「保全指定」は、公にすることで国家及び国民の安全を損なう事態を生じる恐れがある発明が記載されていた場合に限り指定を受けることになっています。

 


《「特許庁ホームページ 特許出願非公開制度について」から一部抜粋》

 

なお、全ての特許出願を非公開にするわけではなく、次のような手順で判断されることになります。

❶ まず「一次審査」によって、特定技術分野に属する発明か否か選別される
❷ 「特定技術分野に属する発明」に該当する場合は、保全審査(二次審査)が行われる
❸  保全審査によって「安全保障上、公開すべきでない」と判断されれば、「保全指定」がされて非公開となる。

 

 

なお、特定技術分野とは、
「日本の安全保障の在り方に多大な影響を与えうる先端技術の分野」や「国民生活・経済活動に甚大な被害を与える手段となりえる技術分野」であり、
具体的には、武器や兵器、航空機・潜水船、航空宇宙、通信妨害、核爆発装置などに関する技術がコレに当たります。

 

ちなみに、特許出願が、潜水船や航空宇宙の分野に関するモノであっても、
非公開とされる特許出願は、「付加要件(防衛軍事・国が開発または委託して発明した場合)に該当するもの」に限定されています。

かなり細かく規定がされていますので、気になる方は、参考サイトのQ&Aなどのリンクを辿って調べてみてください。

 

 

この制度が導入された経緯・目的(これまでの制度ではどうだったか?)

これまでの特許制度では、特許出願された発明は一律に公開されることになっていました。

 

これは特許制度の目的が、
特許を与えることで発明者の権利を保護すると共に、公開することでその発明の利用(利用のみならず、改良や実験なども含む)の促進を図り、産業を発達させていこうというものだからです。

 

しかし、これまでの制度だと、ひとたび特許出願がされると、安全保障上の観点から公開すべきではない発明も一律に公開される制度となっていました。一方、諸外国では、このような発明についての特許出願を非公開にする制度が設けられているのが一般的となっており、国際協調をはかる必要性も出てきていました。

 

そこで、今回、日本でも特定技術分野に限り、特許出願を非公開にする制度を設けられることになりました。

 

 

特許の非公開制度が導入された場合、どうなる?

・2024年5月1日以降、全ての特許出願は、一次審査が行われる。

 

・特許出願するのが上述した「特定技術分野に属する発明」でない場合、出願人にとっては、基本的にこれまでどおりの審査の流れとあまり変わりはなし。

 

「特定技術分野に属する発明」は、第一国出願義務が義務付けられている。
 外国よりも先に日本に特許出願しなければならず(経済安全保障推進法第78条第1項本文)、この規定に違反すると刑事罰の対象になり得るので注意が必要。

 

・保全指定を受けた特許発明は、実施が制限される。
 また、保全指定を受けた特許発明の内容を外部に流出させる行為も禁止。

 

・特許出願の非公開制度における損失補償制度がある。
 社会通念上相当といえる範囲において保証の対象となります。例えば、保全審査(二次審査)、保全指定されたことにより、発明の実施が不許可となった場合に失われた利益など。

損失補償制度については、
事例に依って細かく場合分けなどがなされているので、内閣府のQ&Aで確認するか、専門家などに相談ください。

 

 

おわりに

法改正によって、私たち弁理士も情報収集しておりますが、運用する特許庁は大忙しだったと推察されます。

特定技術分野に属する発明を出願する可能性のある方は、保全指定されると実施制限される場合がありますので、ぜひともチェックください。

 

 

当事務所では、事業者の皆様にとって有益な情報を提供できるように、こういったニュースなどを発信していきます。

ご不明な点やご質問などがございましたら、当所にお問合せ(お問合せフォーム)ください。

それでは!

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