【知財ニュース】2023年の知的財産侵害品の輸入差止件数は、3年ぶりに3万件超え

こんにちは、兵庫県 西宮市の弁理士・倉橋です。

 

今回は、タイトルにも記載したように、「令和5年(2023年)の知的財産物品の輸入差止件数が、3万件を超えた」というニュースを紹介・解説したいと思います。

参考記事:「財務省 令和5年の税関における知的財産侵害物品の差止状況

 

『税関における差止申立制度』について

大前提として、
知的財産権(特許・実用新案・意匠・商標・著作権等、不正競争差止請求権)の権利者は、
侵害品と認められる貨物が輸出入されようとする場合に、その貨物の輸出入を差止・認定手続を申し立てることができます。

 

参考記事:「税関 差止申立制度等の概要

参考記事:「倉橋特許商標事務所 税関における簡素化手続に特許権・意匠権などが追加されました(令和5年10月1日から)

 

 

ザックリ簡単に言うと、税関で知的財産侵害品が見つかれば(認定されれば)、輸出入の差止が可能となります。

 

 

「令和5年の税関における知的財産侵害物品の差止状況」の概要・所見

【概要】

・知的財産侵害物品の「輸入差止件数」31,666件(前年比17.5%増)で、「輸入差止点数」 1,056,245点(前年比19.7%増)でした。コロナ禍が落ち着き、物流が戻ってきたものだと思われます。

 
 
・地域別の仕出国でみると、中国が全体の79.8%(25,271件)を占め、次いでベトナムが8.5%(2,690件)となっています。例年どおり、アジアからの輸入が多いようですね。
 
 
・輸入差止件数の内容としては、偽ブランドなどの商標権侵害物品が 30,448件と全体の95.5%と大半を占めており、2位の偽キャラクターグッズなどの著作権侵害物品が863件(2.7%)を大きく突き放す結果でした。
付加価値の高い商品を模倣したいという心理からか偽ブランド商品が多いのでしょうね。
 
 
一方、輸入差止点数としては、商標権侵害物品が 500,824点(47.4%)で一位となっており、
 次いで加熱式たばこ用カートリッジ等の意匠権侵害物品が 442,073点(41.9%)、3位が著作権侵害物品 79,221点(7.5%)という結果でした。
タバコ関係と医薬品・サプリメントは一点一点が小さいので、侵害品輸入がしやすいという理由もありますが、かなりの数を持ち込もうとしているのは驚きでした。
 
 
 
 

差し止められた件数でみると、衣類28.3%でバッグ24.5%、靴類12.1%と続き、
アパレル関係の輸入件数が非常に多いことが分かります。

 

一方、差止点数では、タバコや喫煙用具が30.1%と非常に多く、次いで医薬品11.2%、衣類8.0%、電気製品6.5%の順となっており、
健康や安全を脅かす危険のある物品が多いことがわかります。

 

 

・輸入差止が増加した物品としては、ファスナーやブランド椅子のほか、キャラクターの紙製カード・ヘアアクセサリー、美顔用ローラーなどが挙げられます。

・また、税関による差止回避のためと思われる工作を施した事例も資料では紹介されており、例えば、「別の物品の中に商標権侵害品(医薬品)を隠して輸入する事例」や「ロゴ部分をシールや粘着テープで隠す事例」などが多いとのこと。

 

参考記事:「財務省 令和5年の税関における知的財産侵害物品の差止状況

 

 

最後に、知的財産権別での輸入差止実績(点数ベース)の構成比を見ると、商標権47.4%、意匠権41.9%、著作権7.5%となっており、
商標権と意匠権だけで約90%近くにも及びます。

 

事業としてブランド展開されている場合や、輸出入する商品を扱う場合には、
事前の水際対策として「商標権や意匠権の取得」「税関による輸出入の差止」もご検討いただけたらと思います。

ご質問やご不明な点等があれば、当所にご相談ください。

それでは!

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