意匠法特有の制度について解説②【秘密意匠、組物の意匠】
兵庫県西宮市にある「倉橋特許商標事務所」の代表で、《商標・特許を専門とする弁理士》の倉橋和之と申します。
当ブログでは、世間一般にあまり聞き慣れないと言われる知的財産に関する知識・情報や、私の活動や考えなどを発信しています。
今回は、「意匠法 特有の制度」である「秘密意匠」「組物の意匠」ついて簡単に解説したいと思います。
目次
意匠法 特有の制度とは?
前回のおさらいになりますが、意匠法には、以下に示すような特有の制度が設けられています。
・部分意匠
・関連意匠
・秘密意匠
・組物の意匠
・動的意匠
・内装の意匠
今回はこの中の「秘密意匠」と「組物の意匠」について、簡単に説明していきます。
秘密意匠について
「秘密意匠」制度とは、
出願人の請求によって、一定期間(設定登録から3年以内)、登録された意匠の内容を秘密にできる制度です。
意匠が登録された場合、原則として公報に掲載されて公開されます(登録公示制度と言います)。
しかし、登録した意匠が公開されてしまうと、第三者(ライバル会社など)に自社の将来のデザイン戦略・デザイン傾向(流行)が容易に知られてしまい、権利者の不利益は非常に大きなものとなってしまいます。
そこで、意匠の実施時期と公表時期との調整を図るために「秘密意匠」制度が設けられました。
【留意点】
上述したように、秘密意匠の請求が行われた場合、登録された意匠が公報に掲載されません。
そのため、自分が実施したい意匠(または出願したい意匠)があった場合に 事前調査を行っても、同一・類似の意匠(他人の秘密意匠)は見つけられません。ご注意ください。
組物の意匠について
「組物の意匠」とは、
同時に使用される2以上の物品からなる組物(経済産業省令で定めるもの)の意匠が全体として統一感があるときに、一意匠として登録を認めるという制度です。
従来から、複数の物品群(セット)の自由な組み合わせを考慮しながらも、全体的に統一感が出るようデザインを行う「システムデザイン」が実態的に行われていました。
しかしながら、「個々の物品では非類似になるよう少し変更を加えつつも、全体としては著名なシステムデザインに類似させる」といった巧みな模倣が行われるケースも多くなり、個々の物品ごとの意匠権では排除できないという問題が生じていました。
そこで、システムデザインを適切に保護するため、「組物の意匠」制度が導入されました。
【参考例】
・意匠登録:1593431
・意匠に係る物品:一組の食卓用皿及びコップセット
・意匠権者:株式会社ニトリホールディングス
・画像はPlatpatから抜粋
次回は、「動的意匠」「内装の意匠」について簡単に説明していきたいと思います。
いかがでしたでしょうか?
なお、意匠登録は公開前に行う必要があり、一度きりの機会となります。出願書類に不備があると、意匠登録ができなくなってしまいますので、ご自身で登録手続をされる際はお気を付けください。意匠調査や意匠登録は専門性が高いため、できれば弁理士などに依頼することをオススメします。