意匠法特有の制度について解説①【部分意匠、関連意匠】
兵庫県西宮市にある「倉橋特許商標事務所」の代表で、《商標・特許を専門とする弁理士》の倉橋和之と申します。
当ブログでは、世間一般にあまり聞き慣れないと言われる知的財産に関する知識・情報や、私の活動や考えなどを発信しています。
今回は、「意匠法 特有の制度」である「部分意匠」「関連意匠」ついて簡単に解説したいと思います。
目次
意匠法 特有の制度とは?
意匠法では、以下に示すような特有の制度が設けられています。
・部分意匠
・関連意匠
・秘密意匠
・組物の意匠
・動的意匠
・内装の意匠
今回は、この中の「部分意匠」と「関連意匠」について簡単に説明していきます。
部分意匠について
通常、対象物全体の形状等(全体意匠)について意匠登録するために出願を行いますが、対象物のある一部分の形状等(部分意匠)についても意匠の登録が可能となっています。
このような制度(対象物の一部分の形状等について登録できる制度)を「部分意匠」制度と言います。
以前は対象物の一部分については保護対象と認められておらず、
特徴ある一部分が模倣されたとしても、対象物全体として非類似であれば回避されてしまい、その効力が及びませんでした。
そこで、独創的な一部分のみ模倣する行為を取り締まるために「部分意匠」制度が設けられました。
関連意匠について
基本的に、登録した意匠の同一・類似の範囲については、何人も意匠登録することはできませんが、「関連意匠」制度を利用すれば登録できる場合があります。
「関連意匠」制度とは、一つのデザイン・コンセプトから創作された複数の意匠群(バリエーション・デザイン)の登録を可能とする制度です。
以前は、類似する意匠については、同日出願のみ登録が認められていました。しかし、同日に、市場投入予定の全てのデザインについて意匠出願するのは非常に困難でした。
また、近年のデザイン重視の商品開発においては、「意匠の出願後にデザインが変更したり」、「当初の製品投入後に需要動向を見ながら追加的にデザイン・バリエーションを増やす」など、デザイン戦略が多様化したこともあり、
現在では基礎意匠の出願(最初の出願)の日から10年以内であれば、関連意匠の出願が認められるようになりました。
「基礎意匠の出願日から10年以内」かつ「基礎意匠、または先に出願した関連意匠の類似の意匠」であれば、関連意匠として登録が可能です。
なお、基礎意匠の出願日から25年で、全ての関連意匠が消滅してしまうという点にご注意ください。また、基礎意匠と関連意匠の意匠権は分離して移転することもできません。
いかがでしたでしょうか?
なお、意匠登録は公開前に行う必要があり、一度きりの機会となります。出願書類に不備があると、意匠登録ができなくなってしまいますので、ご自身で登録手続をされる際はお気を付けください。意匠調査や意匠登録は専門性が高いため、できれば弁理士などに依頼することをオススメします。