【知財ニュース】生成AIのデータ学習段階は、知的財産権の対象外(検討会発表)

こんにちは、兵庫県 西宮市の弁理士・倉橋です。

 

先日(3月21日)に「AI時代の知的財産権検討会(第6回)」が行われ、首相官邸サイトでその 中間とりまとめ骨子案が示されました。

タイトルはその一部抜粋ですが、

今回は、中間とりまとめ骨子案の一部を抜粋して紹介しながら、所見などについて解説していきたいと思います。

 

 

参考:「首相官邸 政策会議 AI時代の知的財産権検討会(第6回)議事次第

生成AIのデータ学習段階は、知的財産権の対象外

検討会の内容ですが、
従来から議論されてきたとおり、「生成AIの学習段階はいずれの知的財産権の侵害行為には当たらず、規制の対象外」という考えで一致しました。

一方で、生成・利用段階は、人間が生成したものと同じ様な判断がなされる方針のようです。

 

つまり、
❶ AI作っている過程では、知的財産権(一部の著作権を除く)を学習データとして入力する行為は侵害行為に当たらない

❷ ユーザーの利用段階(生成・利用・運用段階)では、生成物が侵害品に該当するか否か人間が判断する

という内容でした。

 

なお、この政策会議では、「作風」「画風」といった形になっていないアイデアについては、生成・利用したとしても、基本的には著作権侵害とはならないとのこと。

さらに合成音声の元となる声優・俳優・キャスター等の「声」についても話合われており、

「声」ついては著作物ではなく、肖像権により保護される可能性は高いとは言えないという見解が示されました(パブリシティ権では、条件によって保護される可能性あり)。合成音声については権利主張をするのは難しそうですね。

 

生成AIの各段階における知的財産権の考え方だけでなく、技術による対策、諸外国の動向など、かなり広い範囲での検討が行われていました。

 

余談ですが、政策会議では、

AIによる著作権の侵害について、責任の所在・侵害判断の技術的な問題などについても話し合われています。

 

ちなみに、著作権侵害の要件の一つに「依拠性(著作物を制作する際に、すでにある別の著作物を参考にして創作すること)」というものがあるのですが、
その「依拠性」についてはAIアプリのユーザーが知り得ない場合なども想定できるため、ユーザーがAIを利用する際にどこまで知っていたか(AI製作者側がどのような措置を取っていたか等)細かく場合分けをしながら、かなり多くの議論がなされていたことが分かりました。

 

 

まとめ

今回の検討会で知的財産権との関係について、かなりの部分の考え方が示されたように思われますが、対策に関してはまだ議論が必要にも思われます。

技術の進歩によって、
万人がクリエーターになれる(素人でも、容易に様々な分野で創作活動ができる)素晴らしい世界がやってきたとも言えますが、
先人やこれまで創作活動をしてきた人が不当な損失を受けないようにすると共に、生成AIを利用する人が安心して創作活動できるような環境づくり等が重要ですね。

 

これからも注目していき、動きがあれば報告いたします。

参考:「首相官邸 政策会議 AI時代の知的財産権検討会(第6回)議事次第

 

 

ご不明な点や、生成AIなどの利用の際の権利関係などでお悩みのある方は、当所にご相談ください。

それでは!

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