【知財ニュース】2023年の知的財産侵害品の輸入差止件数は、3年ぶりに3万件超え
兵庫県西宮市にある「倉橋特許商標事務所」の代表で、《商標・特許を専門とする弁理士》の倉橋和之と申します。
当ブログでは、世間一般にあまり聞き慣れないと言われる知的財産に関する知識・情報や、私の活動や考えなどを発信しています。
今回は、タイトルにも記載したように、「令和5年(2023年)の知的財産物品の輸入差止件数が、3万件を超えた」というニュースを紹介・解説したいと思います。
参考記事:「財務省 令和5年の税関における知的財産侵害物品の差止状況」
目次
『税関における差止申立制度』について
大前提として、
知的財産権(特許・実用新案・意匠・商標・著作権等、不正競争差止請求権)の権利者は、
侵害品と認められる貨物が輸出入されようとする場合に、その貨物の輸出入を差止・認定手続を申し立てることができます。
参考記事:「税関 差止申立制度等の概要」
ザックリ簡単に言うと、税関で知的財産侵害品が見つかれば(認定されれば)、輸出入の差止が可能となります。
「令和5年の税関における知的財産侵害物品の差止状況」の概要・所見
【概要】
・知的財産侵害物品の「輸入差止件数」は 31,666件(前年比17.5%増)で、「輸入差止点数」は 1,056,245点(前年比19.7%増)でした。コロナ禍が落ち着き、物流が戻ってきたものだと思われます。
次いで加熱式たばこ用カートリッジ等の意匠権侵害物品が 442,073点(41.9%)、3位が著作権侵害物品 79,221点(7.5%)という結果でした。
差し止められた件数でみると、衣類28.3%でバッグ24.5%、靴類12.1%と続き、
アパレル関係の輸入件数が非常に多いことが分かります。
一方、差止点数では、タバコや喫煙用具が30.1%と非常に多く、次いで医薬品11.2%、衣類8.0%、電気製品6.5%の順となっており、
健康や安全を脅かす危険のある物品が多いことがわかります。
・輸入差止が増加した物品としては、ファスナーやブランド椅子のほか、キャラクターの紙製カード・ヘアアクセサリー、美顔用ローラーなどが挙げられます。
・また、税関による差止回避のためと思われる工作を施した事例も資料では紹介されており、例えば、「別の物品の中に商標権侵害品(医薬品)を隠して輸入する事例」や「ロゴ部分をシールや粘着テープで隠す事例」などが多いとのこと。
参考記事:「財務省 令和5年の税関における知的財産侵害物品の差止状況」
最後に、知的財産権別での輸入差止実績(点数ベース)の構成比を見ると、商標権47.4%、意匠権41.9%、著作権7.5%となっており、
商標権と意匠権だけで約90%近くにも及びます。
事業としてブランド展開されている場合や、輸出入する商品を扱う場合には、
事前の水際対策として「商標権や意匠権の取得」と「税関による輸出入の差止」もご検討いただけたらと思います。
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