特許の明細書の作成はなぜそんなに時間がかかるの?(前編)

兵庫県西宮市にある「倉橋特許商標事務所」の代表で、《商標・特許を専門とする弁理士》の倉橋和之と申します。

当ブログでは、世間一般にあまり聞き慣れないと言われる知的財産に関する知識・情報や、私の活動や考えなどを発信しています。

 

 

今回は、「なぜ特許の明細書作成にはそんなに時間がかかるのか?(前編)」について、簡単にご紹介したいと思います。

 

特許の明細書の作成はなぜ時間がかかる? その理由とは

特許の明細書作成になぜ時間がかかってしまうのかというと、主に以下❶~➍に時間がかかるからという答えになります。

❶先行技術の調査・検討・学習

❷権利範囲の検討

❸明細書と図面の構成の検討

➍抜け漏れ・誤字脱字のチェック

 

以下、簡単に説明していきます。

 

上記❶~➍は、分かりやすさを重視するため、あくまでもザックリとした項目(私の理由)です。

明細書の作成時に検討している事項・留意事項を一つ一つ列挙していくと、それだけで本が数冊書ける分量になってしまうため、ザックリとした説明になってしまう点はご容赦ください。

また、弁理士によって個人差があるため、理由は異なる場合があります

 

 

❶ 先行技術の調査・検討・学習

(1) 先行技術の調査・検討

クライアントがアイデアや発明を持ち込んでこられた場合、まずは先行技術の調査を行います。

 

「すでに出願された発明に同じものはないか?」「特許されそうかな?」ということを調査によって調べるためです。
具体的には、その分野の参考書や先行技術文献(その分野において、先に特許出願された明細書など)を読んで、同じものがすでに世間に知られていないかを調査します。

 

 

特許権は、すでに知られている技術やアイデアでは取得することはできません。
そのため、出願前に先行技術の調査を行い、特許される可能性があるか否か 事前検討することは重要です。

(※調査せずに出願することも可能ですが、先行技術調査をする・しないで、特許される確率は大きく変わるためです)

 

 

(2) 先行技術の学習 

特許の明細書を書く場合、その技術分野について何も知らなければ書くことができません。

そして、当然ですが私たち弁理士にとっても初めて依頼を受ける技術分野もあります。

 

ですので初めての技術分野の特許出願を依頼された場合は、参考書やインターネットで情報収集をし、その分野をインプット(学習)しなければなりません。その際、その分野の先行技術文献を読むことは効率の良い学習になります。

 

弁理士に依るとは思いますが、私の場合、特許出願を行う場合には、先行技術文献を5~15件は読み込みます。

 

 

❷ 権利範囲の検討

理由は色々ありますが、クライアントの方の意向によって権利範囲を小さくするという特別な事情がない限り、

特許の権利範囲は、「より広く・より大きく」という考え方が一般的になります。

 

 

具体的には、発明など(発明やアイデア)の本質を理解したうえで、その発明などを実現するために必要最小限の要素(エッセンス)のみを抽出していきます。それと同時に、発明などに至った経緯・ストーリー(これまでの課題と、その解決方法)も検討します。

 

弁理士によって多少異なるかとは思いますが、
クライアントの方が持ち込まれたアイデア・発明から、権利範囲を最大限大きくするため、私の場合は「特許請求の範囲」の記載内容の検討に多くの時間をかけます。

 

ひとつ覚えていて欲しいのが、

権利範囲 = 「特許請求の範囲」ということ。

 

この辺の内容は過去の記事「特許の特許請求の範囲とは?書き方や留意点を紹介します。」で記載しておりますので、ご参考ください。

 

また、発明などに至った経緯・ストーリーが変わると、「特許請求の範囲」や「明細書」の記載(話の展開)も大きく変化するため、「特許請求の範囲」や「明細書」の方向性を決める上で、発明に至った経緯・ストーリーの検討も非常に重要だと言えます。

 

 

特許を始めとする産業財産権(特許権・実用新案権・意匠権・商標権)は、

自らが持つ無形財産(アイデアなど目に見えない無形の財産)のうち、欲しい権利を自己主張(どこからどこまでの権利を有しているのかを、文字や図形を使って記載して明示)しなければならない特殊な権利です。

 

つまり、出願を行う際に、どこまでが自分の権利であるか分かるように境界線を引いている(「見える化」している)と考えると分かりやすいかもしれませんね。

 

長くなってきたので、残りの項目❸➍(理由)は次回にご紹介します。

 

 

 

いかがでしたか?

特許の出願書類の作成にはノウハウがあり、専門性が高いため、慣れていないうちはハードルが高いと考えます。

また、明細書の表現によっては特許権の権利範囲がとても小さくなってしまいことがあります。特許を取得したけどあまり意味のない権利になってしまったということがないよう、この点についてご留意ください。

 

特許の出願書類の作成が面倒な方や、慣れていない方、適切な出願書類を作成できるか不安な方は、弁理士に依頼することをオススメいたします。

 

当事務所では、「開発した製品・アイデア・発明について、特許取得できそうか知りたい」「自社の製品が他人の特許権の侵害になっていないか調査してほしい」「他人の模倣品の販売を止めたい」「外国でも特許出願したい」「苦労して生み出した製品・技術をどのように保護すべきか知りたい」といったご相談も承りますので、お気軽にご連絡ください。

 

当事務所では、商標や特許、意匠の出願手続のほか、
スタートアップや中小事業者の知財トラブルを未然に防ぐ「知財の相談窓口」として、ブランディングや(商品開発段階・商品販売後の)権利侵害などの相談も承っています。

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