意匠権の侵害とは?どんな行為が該当するのか解説します
兵庫県西宮市にある「倉橋特許商標事務所」の代表で、《商標・特許を専門とする弁理士》の倉橋和之と申します。
当ブログでは、世間一般にあまり聞き慣れないと言われる知的財産に関する知識・情報や、私の活動や考えなどを発信しています。
今回は、「意匠権の侵害となる行為」について分かりやすく解説していきたいと思います。
目次
意匠権の侵害とは?
意匠権の侵害とは、
他人が、登録意匠、およびその類似範囲(類似意匠)を正当な理由・権限なく業として、
❷ その他に侵害とみなされる予備的行為(侵害する可能性の高い行為)を行うこと
を言います。
これらの行為を行っている場合に、意匠権者等は差止請求や、付帯請求(後に説明します)などを行うことが可能です(参考条文:意匠法第23条、第37条、第38条)。
・意匠の侵害 = 登録意匠およびその類似範囲を正当理由・権限なく業として「❶ 実施」+「❷ その他の侵害とみなされる予備的行為を行うこと」
なお、❶は「直接侵害」と呼ばれており、❷は「間接侵害」と呼ばれます。
意匠権の効力範囲(登録意匠とその類似範囲)については、別の記事で詳細に説明しているので、そちらを参考にしてみてくださいね。
参考記事:「 意匠権の効力範囲・類否判断とは? 」
侵害とみなされる行為(間接侵害)とはどんな行為が該当するの?
上にも書きましたが、登録意匠(およびその類似範囲)業として実施する行為(直接侵害)以外にも、侵害とみなされる予備的行為(間接侵害)があります。
間接侵害(侵害の予備的行為)は、例えば、次に示すような他人の行為が該当します。
・登録意匠またはその類似意匠に係る物品の生産のみに用いる物(専用マシン。金型、製造プログラムを含む)を、業として生産や譲渡、輸入する行為、または譲渡等の申し出を行う行為
・登録意匠またはその類似意匠に係る物品を業として、譲渡、貸渡または輸出のために所持する行為
例えば、侵害品を倉庫に所持するなどのように、実施する可能性が高い行為(意匠権を侵害するおそれのある行為)も「侵害とみなす行為」とし、差止請求が認められています。
今回は、普通の侵害行為(登録意匠・類似意匠に係る物品を販売する等の侵害行為)以外にも、侵害の予備的行為というものがあるということを、頭の片隅に置いてくれれば幸いです。
付帯請求とは?
先程少し説明したように、
意匠権者などは、意匠権を侵害している者に対して、差止請求や付帯請求を行うことができます(意匠法第37条)。
さて、「差止請求」とは侵害行為の停止などを請求することですが、「付帯請求」はなんだか聞き慣れない言葉ですよね。
「付帯請求」とは、侵害の予防に必要な行為を請求することを言います。
但し、付帯請求は、差止請求を前提しています。差止請求を行わずに、付帯請求だけ独立して請求することはできません。
付帯請求では、例えば、以下に示す(1)~(3)のような請求が可能です。
(1)侵害行為が行われる可能性の高い物品廃棄
例:登録意匠がペンAである場合に、ペンAを廃棄させる。ペンAを製造するためのプログラム等も対象(間接侵害)となるため、そのプログラム等の廃棄を請求することが可能
(2)侵害行為を行う設備の除去
例:登録意匠であるペンAを製造する機械の除去
(3)その他に侵害の予防に必要な行為
このように意匠法では、差止請求のほかに、侵害の予防に必要な行為として付帯請求が認められています。
いかがでしたか?
なお、差止請求等の手続きはややこしいケースが多くなりますし、細かな侵害判断も専門的な知識や経験が必要になります。もしも侵害判断や差止請求をご検討されている人は、専門家に任せた方が安心だと思われます。
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