特許出願の「早期審査」とは? 費用・手続等について分かりやすく解説します

兵庫県西宮市にある「倉橋特許商標事務所」の代表で、《商標・特許を専門とする弁理士》の倉橋和之と申します。

当ブログでは、世間一般にあまり聞き慣れないと言われる知的財産に関する知識・情報や、私の活動や考えなどを発信しています。

 

 

今回は、特許出願の「早期審査」について、簡単にご紹介していきたいと思います。

 

参考:「特許出願の『スーパー早期審査』とは?対象・費用・手続について分かりやすく解説します

 

通常の場合、審査請求から一次審査の通知まで9~11か月かかりますが、

一方で、早期審査を申請した特許出願の場合には、一次審査の通知は申請から平均で3か月以下となるため、大幅に短縮できます。

 

 

「早期審査」制度の目的とは

「早期審査」制度は、以下のように様々な目的があって運用されています。

・早期保護の必要性やニーズの高い「すでに実施している発明」「資本力の少ない中小ベンチャー企業等の発明」を早期保護することで、市場での競争力の早期に確保すること

 

・外国に展開する企業に対し、グローバルな経済活動を支援を図ること

 

・大学や公的研究機関による研究成果をいち早く社会に還元すること

 

・「環境に優しいグリーン技術に関する研究開発の促進」や「グローバル企業の我が国への研究開発拠点等の呼び込みの推進」などを目的とし、その研究開発事業の成果をいち早く保護すること

 

 

『早期審査』の要件、費用、手続について

早期審査の要件について

『早期審査』の対象となるには、以下の3つの要件・条件を満たしている必要があります。

(a) 以下 ①~⑥ のいずれかの条件を満たした特許出願であること


(b) 出願審査請求がされていること、早期審査の申請手続を行っていること


(c) 特許出願がみなし取下げされないこと

 

以下簡単に説明していきます。

 

 

(a) 以下 ①~⑥ のいずれかの条件を満たした特許出願であること

①~⑥の具体的な内容は次のとおりです。

① 出願人または実施許諾を受けた人が、すでに実施している発明に係る特許出願(実施関連出願)

② 外国にも出願している特許出願(外国関連出願)

③ 中小企業、個人、大学、公的研究機関などの特許出願

④ グリーン関連出願

⑤ 震災復興支援関連出願

⑥ アジア拠点化推進法関連出願

 

用語の定義やご自身がどちらに該当するかは、特許庁のホームページに詳しく記載さていますのでご参照ください。

参考:「特許庁ホームページ 特許出願の早期審査・早期審理について

 

 

(b) 出願審査請求がされていること、早期審査の申請手続を行っていること

早期審査の対象とするには、審査請求が行われていて、まだ出願審査が行われていないことが条件となっています。まだ審査請求もされていないのに、早期審査の申請をしてもその対象にはなりません。

 

なお、早期審査をする・しないは出願人の自由です。
したがって、早期審査の申請手続が行われていない特許出願が、勝手に早期審査されることはありません。早期審査の対象とするには、早期審査の申請手続が必要です。

 

 

(c) 特許出願がみなし取下げされないこと

国際出願や国内出願で優先権主張を行っている場合、基礎となる出願は一定期間が経過すると、取り下げたとみなされます。これを「みなし取下げ」といいます。

要は「みなし取下げ」となるような特許出願は、早期審査できません。
(※優先権を主張していなければ問題ありません)

 

 

早期審査の費用について

早期審査の申請手続は、無料です。

 

但し、早期審査の申請手続を弁理士・弁理士事務所に依頼した場合は、弁理士費用が発生します。

弁理士費用は、その弁理士・弁理士事務所によっても異なります。詳しい費用については、ご依頼予定の弁理士・弁理士事務所にお問合せください。

 

 

早期審査の申請手続とは

早期審査の申請手続は、
『早期審査に関する事情説明書』を特許庁に提出する必要があります。

 

『早期審査に関する事情説明書』には、

【早期審査の種別】欄に、「早期審査」と記載し、【事情】欄に、早期審査の対象である出願人であること等を記載するほか、先行技術文献の開示および対比説明なども記載する必要があります。

 

 

「早期審査」の申請する際の注意事項

手続に不備があると、早期審査の対象外になってしまう場合がある

早期審査の申請手続を行った場合、特許庁にて早期審査の対象となるか否かの選定が行われますが、
例えば以下のような場合には、早期審査の対象外となってしまうことに注意ください。

・早期審査の対象である上記①~⑥の特許出願ではない場合

 

・手続書類に方式不備があった場合

 

・先行技術の開示や対比説明がない場合(または、記載が不十分の場合)

 

 

早期審査の対象にならなかった場合には、通知がきます。

また、早期審査の対象とならなかった特許出願は、通常の特許出願と同様に取り扱われます。

 

 

制度改正には注意!

知的財産権にかかる法律や制度は、不変ではなく、数年経つと改正が行われている場合があります。
制度の改正によって、手続方法や様式などが変更になっている可能性もあります。

 

苦労して調べ、書類作成して手続を行ったのに、結局、早期審査が受けられなかったということが無いよう、
早期審査制度のご利用を検討されている方は、必ず最新情報をご確認するようにしてください。

 

 

まとめ

早期に権利化することで、「特許発明の有効性が早く判断できる」「発明を実施している場合の早期保護が可能(侵害者に対して早期に対処できる)」「早くライセンス契約が交わせる」など様々なメリットがあります。

ご自身の事業状況に合わせて、必要あれば早期審査の利用もご検討ください。

 

 

 

いかがでしたか?

当事務所では、知的財産に関して常に最新情報をチェックしております。
早期審査をご検討されている方は、当事務所に特許出願や出願審査請求の手続をご依頼いただく際に、その旨をお伝えいただければスムーズに手続ができます。

 

また、「早期審査がよく分からない」「早期審査をした方が良いだろうか」「早期審査の申請を行う場合の手続が知りたい」といったご相談も承りますので、まずはお気軽にご連絡ください。

 

 

当事務所では、商標や特許、意匠の出願手続のほか、
スタートアップや中小事業者の知財トラブルを未然に防ぐ「知財の相談窓口」として、ブランディングや(商品開発段階・商品販売後の)権利侵害などの相談も承っています。

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