組物の意匠とは?【制度・参考例、要件などを解説】

こんにちは。兵庫県 西宮市の弁理士・倉橋です。

 

以前、意匠法の「特有の制度」について、ブログで簡単にご紹介しましたが、
今回はそのうちの一つである「組物の意匠」について、もう少し詳しく解説していきたいと思います。

参考記事:「意匠法特有の制度について解説②【秘密意匠、組物の意匠】

 

「組物の意匠」とは?(制度の説明)

『組物の意匠』の制度とは、
同時に使用される「複数の物品の組み合わせ(組物)」が全体として統一感が認められる場合に、一つの意匠として登録できる制度のことです。

 

同時に使用される「複数の物品の組み合わせ」とは、
例えば、『システムデザイン』『セットデザイン』等のような、自由な組み合わせを考慮しつつ全体として統一感を持たせるようセットのことを言います。

 

例えば、システムデザインの場合、
『組物の意匠』制度が導入される前までは、(一部の例外を除き)それぞれの構成物品ごとに意匠登録する必要がありました。

 

しかし、システムデザインのそれぞれの構成物品に少しずつ変更を加えながら(個々の意匠権をかわしつつ)、全体としてそのシステムデザインに類似したイメージになるような巧みな模倣がされることがあり、システムデザインを適切に保護できない場合がありました。

 

そこで、このような巧みな模倣行為を防ぐため、「組物の意匠」の制度が導入されました。

 

 

「組物の意匠」の参考例

以下に、組物の意匠として認められる例を参考として、いくつか示します。

 

 

《いずれも「特許庁 意匠審査基準 第IV部第4章 組物の意匠」から抜粋》

 

 

「組物の意匠」の要件は?

「組物の意匠」の要件は次のとおりです。

(1) 経済産業省令で定める組物の意匠に該当すること
(2) 同時に使用される2以上の物品などであること
(3) 組物全体として「統一」があること

 

(1) 「組物の意匠」として認められるには、意匠法施行規則別表第二に記載された物品でなければなりません。

意匠法施行規則 別表第二に記載された物品は、「一組の調理器具セット」「一組の調理器具セット」「一組の家具セット」など43種類あります(令和6年6月現在)。

制度改正によって、「組物の名称」や「組物の種類の数」が変更されている場合がございます。

出願の際には、必ず最新の「意匠法施行規則 別表第二」をチェックする必要があります。

 

 

(2) については、組物の構成物品が適当であると認められる必要があります。

 

(3) については、例えば、次のような要件を満たせば、組物全体として「統一」を有するとされています。

・各構成物品等の形状、模様もしくは色彩またはこれらの結合が、同じような造形処理で表されている場合
・各構成物品等により組物全体として一つのまとまった形状または模様が表されている場合
・各構成物品等の形状、模様もしくは色彩またはこれらの結合によって、物語性など組物全体として観念的に関連がある印象を与えるものである場合

 

「組物の意匠」の要件を満たしているかご不明な場合には、専門家(弁理士)などにお問合せください。

 

 

「組物の意匠」の手続について

「組物の意匠」の手続では、

(a) 願書の【意匠に係る物品】欄に、「意匠法施行規則 別表第二」に掲げる組物を記載する必要があります。

(b) また、図面等については、組物の意匠であることを表現することができるものを提出する必要があります。
(組物の意匠の要件の一つである「統一」を示すことができるか否かによって、必要な図面は異なります)

 

 

いかがでしたでしょうか。

今回は、システムデザインなどを保護する目的で導入された「組物の意匠」制度について解説いたしました。こういった意匠も登録できるというヒントになれば幸いです。

 

「組物の意匠で出願するか判断に迷われている場合」や「登録すべきか迷われている意匠デザインやアイデアなどがある場合」には、まずはお気軽にご相談ください。

事業内容などを考慮して (出願すべきか否かも含め)どの制度を用いて出願した方が良いか等、ご提案することも可能です。

 

当事務所では、商標や特許、意匠の出願手続のほか、
スタートアップや中小事業者の知財トラブルを未然に防ぐ「知財の相談窓口」として、ブランディングや(商品開発段階・商品販売後の)権利侵害などの相談も承っています。

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