動的意匠とは?【制度・参考例、要件などを解説】
こんにちは。兵庫県 西宮市の弁理士・倉橋です。
以前、意匠法の「特有の制度」について、ブログで簡単にご紹介しましたが、
今回はそのうちの一つである「動的意匠」について、もう少し詳しく解説していきたいと思います。
参考記事:「意匠法特有の制度について解説③【動的意匠、内装の意匠】」
目次
動的意匠とは?(制度の説明)
「動的意匠」とは、形状や模様などが変化し、静止状態から動いて変化する状態が予測できない物品等のことを言います。
「動的意匠制度」とは、静止状態から変化する形状・形態が予測できない場合に、動いて変化する意匠を一つの出願登録できるようにした制度のことです。
例えば、変形するオモチャや折り畳み椅子など、物品や画像の中には、その機能に応じて形状・模様などが動いて変化するモノが存在します。
しかし、意匠制度には一意匠一出願という原則があり、静止状態から動いて変化した後の状態が予測できない場合には、変化した形状・形態ごとにいくつも意匠出願しなければならなかったため、手続きが煩雑・面倒になっていました。
そのため、変化する全体の形状・形態を一つの出願で権利化できるようにしたのが「動的意匠制度」です(意匠法第6条第4項)。
動的意匠の参考例
動的意匠として登録される物品としては、特許庁では玩具(おもちゃ)を例として挙げています。
実際に登録されている物品だと、「折り畳み椅子」や「テントのフレーム(骨組み)」「ソファーベッド」「帽子」「焚き火台フレーム」「収納箱」など実に様々な物品が動的意匠として登録されています。
以下、参考例として、3つほど紹介します。
《「特許庁 意匠登録出願の願書及び図面等の記載の手引き 形状等が変化するものの場合」から抜粋》
・Jplatpatから抜粋《https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/DE/JP-2009-030147/30/ja》から抜粋
・意匠登録:1423191
・意匠に係る物品:折り畳み椅子
・意匠権者:株式会社ロゴスコーポレーション
・Jplatpatから抜粋《https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/DE/JP-2014-027809/30/ja》から抜粋
・意匠登録:1537844
・意匠に係る物品:腰掛け
・意匠権者:有限会社高橋木工製作所
動的意匠の要件は?
動的意匠の要件は次のとおりです。
・物品などの形状などが変化すること
(構造的作用による変化)
・変化が予測できないこと
・可逆性のある変化であること
なお、動的意匠と認められなかった場合は、拒絶されることになります。
動的意匠の手続について
動的意匠の手続では、
願書の【意匠の説明】欄に、「動的意匠である旨」と「物品の機能の説明」を記載する必要があります。
また、変化の前後の図面(必要に応じて変化途中の形状等の図面)を添付します。
いかがでしたでしょうか。
今回は、動きのある意匠も登録ができる動的意匠制度について解説いたしました。こういった意匠も登録できるというヒントになれば幸いです。
「動的意匠で出願するか判断に迷われている場合」や「登録すべきか迷われている意匠デザインやアイデアなどがある場合」には、「お問合せフォーム」などからお気軽にご相談ください。
また、事業内容などを考慮して(出願すべきか否かも含め)どの制度を用いて出願した方が良いか等も、ご提案することも可能です。