生成AIにより激変するクリエイターの将来・著作権の問題など
兵庫県西宮市にある「倉橋特許商標事務所」の代表で、《商標・特許を専門とする弁理士》の倉橋和之と申します。
当ブログでは、世間一般にあまり聞き慣れないと言われる知的財産に関する知識・情報や、私の活動や考えなどを発信しています。
2023年は、次々とAI技術が導入された年となりましたね。
記憶に新しいところであれば、
ChatGPT(公開は2022年11月)や、生成AI(画像生成AIなど)、BingやEdgeなどのWebブラウザなどにも会話型AIが導入されました。
AIが様々な分野に進出してきたと感じる今日この頃。日常的に活用されて、それまでとは業務量が激変した人も多いのではないでしょうか。
さて、今回は「クリエイターの分野におけるAIの活用」と「その問題」について、いくつか記事を紹介しながら、著作権の問題について説明したいと思います。
目次
マリオのステージを生成するAI『MarioGPT』が公開
今年2月、コペンハーゲンIT大学研究チームがゲーム「スーパーマリオブラザーズ」のステージを自動で生成する「MarioGPT」について、論文で発表されました。
参考:「TECHNO-EDGE AIでスーパーマリオのステージを生成する『MarioGPT』を発表。」
ChatGPTを使用するGPT(OpenAIが開発した、人間のように自然な文章を生成することができる言語モデル)を使用して、ゲームステージを作れることが明確になりました。
なお、記事にもあるように、著作権は技術開発などの試験での利用には制限されています(著作権法第30条の4)。現在のところ、実際にMariGPTを制作して販売等を行うと著作権を侵害しますのでご注意ください。
実はかつて、スーパーマリオシリーズのゲームをゲームエミュレーターによって非公式に改造して高難易度ステージを作る「改造マリオ」というジャンルがありました。
某動画配信サービスのサービス開始初期には、この「改造マリオ」動画が注目されていた歴史があります。
その後、「改造マリオ」の流行を受けて発売元の任天堂が、ステージを自由に制作できる「スーパーマリオメーカー」を発表しました。
販売元である任天堂の製品利用の範囲であれば、著作権侵害にはなりませんが、それ以外
様々なクリエイター分野に生成AIが浸透して、世界が激変する
AIを文章の生成で利用するのは良く知られていますが、
音楽や画像、3Dモデルなどを生成AIを利用して制作するアプリなどもリリースされてきています。メタバース空間を(人の手を使わず休まず)作る生成AIの研究なんてものもあります。
生成AIを使ったアプリがリリースされることで、
素人がいきなりそれっぽいクオリティの作品を制作することができるようになりますし、クリエイティブな活動が始めやすいというメリットがあります。
参考:「東洋経済ONLINE 近い将来『ゲームの作り方』が激変する納得の理由」
しかし、ここで問題になってくるのが著作権の問題です。
余談ですが、
生成AIを利用するには「プロンプト」と呼ばれる指示文(質問)を入力する必要があります。適切な「プロンプト」を入力することで、目的に沿ったコンテンツを素早く得ることができます。
ですので、この「プロンプト」を上手に生み出すことのできる「プロンプトエンジニア」という職業も生まれてきています。
一昔前のプログラマーのような感じでしょうか。時代は変わり生成AIが登場したことで、様々な職業・仕事が生まれてきたと感じます。
求められる著作権法の改正
AI生成物は著作物か否か?
著作権は、ある人間の思想・感情などを表現した制作物に発生します。逆に読めば、「人間ではないAIが生成した制作物には著作権がない」という意見があります。
しかし、「道具としてAIを利用したものと考えれば、AIを利用して制作物を作成した人が著作者になると考えられる」というのが文化庁の見解です(文化庁 令和5年6月「AIと著作権」セミナーより)。
著作権侵害かどうかは、実際の生成・利用段階
上述したように、AI開発・学習段階では著作権が制限されます。つまり、既存の著作物を使ったAI開発などは問題ありません。
しかし、AI開発段階で(著作権侵害となるような他人の)著作物を学習させて開発した生成AIを、
そのまま商業サービスとしてリリースすると、著作権侵害となる場合があります。
「AI開発段階」と「生成・利用段階」では分けて考えるようご注意ください。
文化庁は、
AIを利用して生成した制作物も、著作権侵害かどうかは、通常の著作物と同様に判断される(類似性と依拠性から判断)と発表しています。
(文化庁 令和5年6月「AIと著作権」セミナーより)
生成AIが普及してきた昨今、その生成AIを利用したサービスを検討されている方も多いのと思われます。上述した内容はあくまでも基本的な内容です。それぞれのケースや個別具体的な内容は、お話をお聞きしてみないと判断できません。
当事務所では、商標や特許、意匠の出願手続のほか、
スタートアップや中小事業者の知財トラブルを未然に防ぐ「知財の相談窓口」として、ブランディングや(商品開発段階・商品販売後の)権利侵害などの相談も承っています。
「開発した製品・アイデア・発明について、特許取得できそうか知りたい」「自社の製品が他人の特許権の侵害になっていないか調査してほしい」「他人の模倣品の販売を止めたい」「外国でも特許出願したい」「苦労して生み出した製品・技術をどのように保護すべきか知りたい」といったご相談も承りますので、お気軽にご連絡ください。