氏名を含む商標登録の可能性がでてきました【ある程度の知名度は必要】

兵庫県西宮市にある「倉橋特許商標事務所」の代表で、《商標・特許を専門とする弁理士》の倉橋和之と申します。

当ブログでは、世間一般にあまり聞き慣れないと言われる知的財産に関する知識・情報や、私の活動や考えなどを発信しています。

 

 

今日は大晦日。まさか自分がこの時期にもブログを書いているとは(笑)

さて、今回は、「氏名を含む商標登録の可能性がでてきました」ので、そのことについて簡単に解説したいと思います。

 

現行の商標制度はどうなっているのか?

まず、現行(2022年12月現在)の商標制度では、他人の氏名などを含む商標登録は事実上できないことになっています。

 

 

具体的な条文(商標法第4条第1項8号)は以下のとおりです。

他人の肖像又は他人の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を含む商標(その他人の承諾を得ているものを除く。

 

 

この条文があるため、(たとえ自分の氏名であっても)他人の氏名等を含んでいると思われる商標は、基本的に登録できないものとして判断されていました。

 

ちなみに、絶対に登録できないというものではありません。
括弧書きの中に「その他人の承諾を得ているものを除く」という記載がありますよね。

 

そうです。
同姓同名の人の承諾があれば商標登録が可能です(承諾を得る時期にも決まりがあります)。

 

しかし、商標登録の際に、同姓同名の人々全員の承諾を取ってくるのは困難ですよね。

 

ですので、「他人の氏名などを含む商標の登録は、事実上、登録できない」という判断の元、私たち専門家(弁理士)も業務にあたっていました。

 

 

今回、なぜ登録できる可能性が出てきたのか?

さて、なぜ登録できる可能性がでてきたのでしょう?

 

 

それは、2021年8月のマツモトキヨシ音商標の事件(令和2年(行ケ)第10126号)が発端になります。

 

同事件は、ドラッグストアの「マツモトキヨシ」が、CMに使うフレーズの音商標を出願したが拒絶された事件で、知財高裁まで進みました。

マツモトキヨシと同姓同名の人は多いので、条文通りに解釈すると原則的には商標登録できませんが、
ドラッグストア「マツモトキヨシ」のCMフレーズを聴いて「一般人の氏名を示しているものだと認識するとはいえない」と知財高裁は判断し、登録が認められました。

 

 

この事件をきっかけにして、法改正を望む国内外の声が上がっていることや、氏名を含んだ商標登録の可否を争った判例などを踏まえ、

何度か有識者会議を経て、先日(12月23日)に「他人の氏名を含む商標でも、一定の知名度を持つ商標であれば登録を認めるべきだ」とする報告書をまとめられたとのこと。

 

 

早ければ、2023年の通常国会に商標法改正案を提出する方針らしいです。

参考:「 産業構造審議会知的財産分科会 他人の氏名を含む商標の登録要件緩和

 

ちなみに、お気づきの方もいるかもしれませんが、

他人の「肖像(顔)」「雅号、芸名もしくは筆名」なども、他人の承諾を得ているものを除いて、原則的には商標登録できません(商標法第4条第1項8号)。

 

ファッション業界だと、創設者やデザイナーの氏名をブランド名として使用することが多いですが、他人の氏名が含まれていると判断されると拒絶される場合が多いため、ブランド保護が十分にできないという問題がありました。

 

 

今回の法改正の方針によって、
一定の知名度という要件が課されますが、氏名等を含んだ商標登録の要件が緩和され、登録の可能性が拡がってくると考えられます。

 

 

さいごに

このように、法律・条文の解釈、運用なども時代によって変化していきます。

 

今までこういったニュースなどは情報収集・学習して決まったことだけを伝えるように努めてきましたが、
来年はこういった最新ニュースや動向なども、ブログで発信していけたら良いなと感じています。

 

 

皆様、本年は大変お世話になりまして、ありがとうございます。来年もよろしくお願いいたします!

それでは、良いお年をお迎えください(^-^)

 

 

 

いかがでしたか?

商標はブランディングに用いられるため、商標権は個人事業主や中小企業の方にとって、おそらく特許権や意匠権よりも馴染み深い権利になると思います。

 

「どんな商標が登録できるか知りたい」「なにから商標登録してよいか分からない」「商標登録できるか調査してほしい」「商標をどのように利用したらよいか教えてほしい」といったご相談も承りますので、まずはお気軽にご連絡ください。

 

当事務所では、商標や特許、意匠の出願手続のほか、
スタートアップや中小事業者の知財トラブルを未然に防ぐ「知財の相談窓口」として、ブランディングや(商品開発段階・商品販売後の)権利侵害などの相談も承っています。

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