商標の早期審査とは?メリットとデメリットを解説します
こんにちは。兵庫県 西宮市の弁理士・倉橋です。
今回は「商標早期審査」について簡単に制度概要を解説したあと、「(早期審査を利用する)メリット・デメリット」についてご紹介したいと思います。
参考:「商標審査の流れ、商標登録の手続にかかる期間、費用など」
目次
商標の早期審査とは?【制度の概要】
商標の「早期審査」制度とは、
一定の要件を満たした商標出願を行った後に、出願人からの申請が行われた場合に 通常の出願に比べて早く審査を行う制度のことです。
「早期審査」制度を利用することで、
通常の場合だと約9ヶ月ほどかかる審査結果の通知が、2~3ヵ月になります。
早期審査にかかる費用は?
早期審査の申請を行う場合に、特許庁に支払う費用は無料(0円)です。
弁理士または弁理士事務所に依頼した場合は、弁理士費用(2万円~4万円)がかかります。
商標の「早期審査」を行うための要件とは?
商標の「早期審査」の対象とするための要件は、次の2つです。
《条件1》早期審査の対象となる商標出願を行なっていること
《条件2》商標出願の後、早期審査の申請を行うこと
以下、簡単に解説していきます。
《条件1》早期審査の対象となる商標出願を行うこと
《「特許庁 商標早期審査・早期審理の概要」から抜粋》
「早期審査」制度はあくまでも、緊急性の高い商標出願にのみ認められた特例です。
そして、早期審査の対象となる商標出願(緊急性の高い商標出願)とは、上図に示された「対象1」~「対象3」のいずれかを満たした商標出願のことを言います。
なお、「対象1」~「対象3」に共通していますが、
早期審査の対象出願と認められるためには、出願した商標をすでに使用していること(または、使用する直前まで準備していること)が条件となっています。
このように、商標の早期審査は、出願段階から準備が必要になります。
《条件2》商標出願の後、早期審査の申請を行うこと
早期審査の対象となる商標出願を行っただけでは、早期審査はされません。商標出願後に、早期審査の申請をする必要があります。
具体的には、「早期審査に関する事情説明書」などを特許庁に提出する必要があります。
早期審査の申請を行った後、特許庁に「早期審査の対象になる」と認められれば、実際に早期審査が行われます。
「早期審査の対象になる」と認められなかった場合には、通常の出願と同じ扱いになります。
商標の早期審査を行うメリット
商標の早期審査を行うメリットは、次のとおりです。
・模倣品を提供している他人に対して、早く差止請求ができる
・使用中の商標が利用可能か早くわかる
以下、簡単に解説いたします。
模倣品を提供している他人に対して、早く差止請求ができる
早期審査によって早く商標登録されれば、侵害者に対して早く差止請求などを行うことができます。
模倣品が出回っているのに侵害行為を放置していると、その被害が大きくなってしまいます。
早期審査によって早く商標登録できれば、自分の商標を利用した他人の模倣品を早く排除することができ、被害の拡大を抑えることができます。
使用している商標が利用可能か早く分かる
早期審査することで、現在使用中の商標が利用可能かどうか、早く知ることができます。
審査の結果、出願した商標(事業で使用していた商標)が使用できないことが分かった場合には、商標を変更する必要が生じますし、
例えば、商標を使ってそれまで作っていた「ホームページ」や「ロゴデザイン」「商品パッケージ」「商品カタログ」「パンフレット」など、様々なものを変更しないといけなくなります。 取引先に対して、商標変更の通知・連絡が必要になる場合もありえます。
そして、審査の結果を知るのが遅くなるほど、商標の変更に伴う費用(コスト)は大きくなっていきます。
このように早期審査によって、使用中の商標が利用できないことが早く知ることができれば、無駄な費用(出費・労力)を抑えられることができます。
商標の早期審査を行うデメリット
商標の早期審査を行うデメリットは、次のとおりです。
・適切な商品・サービスを指定できない場合がある
・早期審査の申請を行う手間がかかる
以下、簡単に解説いたします。
適切な商品・サービスを指定できない場合がある
早期審査の対象となるのは、上述した「対象1」~「対象3」の商標出願に限られます。
このため、早期審査の対象となる商標出願は、通常の出願に比べ、記載できる指定商品・指定役務(サービス)が制限されています。
将来この商標を使って提供したい商品・サービス(役務)があっても、早期審査の対象の商標出願にする場合には、(使用中でない商品・サービスを)記載できないことがあります。
また、使用中でない商品・サービスを記載できたとしても、記載方法が指定されている場合もあります(対象3)。
早期審査の申請に手間がかかる
上述したように、商標の早期審査の申請では、「早期審査に関する事情説明書」を作成して、特許庁に提出する必要がありますが、
慣れていないと「早期審査に関する事情説明書」の作成には意外と手間がかかります。
また、「早期審査に関する事情説明書」の内容に不備があると、手続をしても審査の結果、早期審査の対象とは認められない場合もあります。
(早期審査の対象となるか否か判明するのは申請してから2・3ヵ月後となります)
商標の早期審査の申請手続について
早期審査の申請手続は、
ご自身で行う方法もありますが、手続に専門知識を必要とするため、専門家(弁理士)に依頼することをオススメいたします。
早期審査をご自身で行う場合には、特許庁のホームページなどをご確認いただき、参考ください。
参考:「特許庁 商標早期審査・早期審理の概要」
いかがでしたでしょうか。
商標の「早期審査」は、一定の要件を満たす商標出願の場合に、通常の出願に比べて早く審査を実施する(2~3ヵ月に短縮できる)制度ですので、早期に権利化を希望される場合には、ぜひ活用をご検討いただければと思います。
早期審査をご検討されている方は、商標出願をご依頼の際にその旨をお伝えいただけるとスムーズに手続が行えます。
また、「ご自身が登録したい商標が早期審査の対象となるか分からない場合」や「商標出願する際に早期審査した方が良いか迷っている場合」には、お気軽にご相談ください。
当事務所では、商標や特許、意匠の出願手続のほか、
スタートアップや中小事業者の知財トラブルを未然に防ぐ「知財の相談窓口」として、ブランディングや(商品開発段階・商品販売後の)権利侵害などの相談も承っています。